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【読書感想文】「コンビニ人間」ってどんな人?自分の在り方を再確認できる芥川賞受賞作品

2021年6月14日

ごきげんにゃんずへのご訪問 ありがとうございます。

今回はこちらの本を読みました。
コンビニ人間
著者: 村田沙耶香  出版社: 文春文庫

ゆっくり読書を楽しむ時間がとれず活字に飢えていたわたしは、160ページ程しかない薄い文庫本に目が留まり、 
「手っ取り早く、流行りの本でも読んでおくか!」とかるい気持ちで本書を手に取りレジへ行きました。

タイトルを見た瞬間、「働く人の話?通い詰めるお客さんの話?」どっちにしても接客の話なら面白うそうかな?と
勝手に単純な日常をの様子を綴った本なのだろうと決めつけて、軽い気持ちで読み始めました
読み終える頃には のままに ありのままに ゆるゆる暮らしていきたいと思わせてくれる作品でした。

こんなひとにオススメ

  • 流行りの本をすきま時間に少しずつ読みたい方
  • 通勤時のバックに入るくらいの薄い単行本が読みたい方
  • コンビニで働いている、コンビニで働く人に興味のある方

作家 and ざっくりあらすじ

作家

村田沙耶香(@sayakamurata )さんは千葉県にお生まれの作家さん。
2003年に「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞され、その後も数々の賞を受賞。
本作「コンビニ人間」で2016年に第155回芥川賞を受賞されています。

ざっくりあらすじ

物語の主人公は、コンビニで18年働く恵子。36歳彼氏なし。
幼い頃から、みんなと同じ「普通の考え方レール」には乗れなかった恵子が、
家族を安心させるため、周囲から正常と思われるために、好きではないけれど利害が一致する白羽と暮らしはじめる物語。

共感と違和感が交錯する物語

このとても薄く小さな文庫本読み終えた時、
「実は、ものすごい分厚い本なのではないか?」と感じるほど、どっと疲れていました。

読み終わった後、こんなに複雑な気持ちなる本は初めてだったかもしれません。 
普段使わないようにしている、「考えすぎる思考」をフル回転して読み終えた一冊。 
それほど、問うてくる事が多く共感してしまう部分と違和感が交錯した本でした。

本を読んで感じたこと

普通であるために」「浮かないために」「こうでなければいけない」と思わざるを得ない人間関係の面倒くささや、
自分を思ってくれる誰かのために「正常」に近づこうとする無意識の葛藤は、
ここまで極端でなくても、少なからず覚えたことのある感覚なのかもしれないと思わず過去を振り返りました。

恵子の突き抜けた問題解決方法には驚かされたし、その方法はお世辞でも共感できないけれど、
わたしはこんなタイプの女の子が苦手ではない。むしろ何を考えているのか興味があって近づいてしまう事もあります。

一方の白羽さんは本当に苦手なタイプ(笑)途中からは、単純に気持ち悪かったし怖かったなぁー(¯―¯٥)
昔は割とこの手のタイプの人に好かれる傾向があったなとか、思い出す必要のない記憶も蘇った。

そんな訳で、色々な意味で他人事ではないお話でした。

この本に出てくる主人公の恵子や白羽は、わたしとは真逆の思考回路を持っているのに、何故か共感に近い理解を示してしまう瞬間がある。
けれどその気持ちもまた、同じでいいのか?と複雑になるのだから感情の落としどころが見つからない。

恵子との共通点

物語を読み進めていくと、恵子に愛着を覚えている自分に気づきます。

最初は単純に、幼い頃から「自分はみんなと考え方が少し違うかもしれない」と気づいた恵子の心情を思うと、
寂しい時もあったのだろうな、周囲を安心させるため「正常」に近づくための努力や思考を続けてきた姿が健気だなと感じ、

偉そうにも他人事として心配していただけ。

けれど読み終えた頃には、恵子を応援したくなる気持ちまで加わり、寂しい思いをして欲しくないとまで感じる程でした。
多分それは、彼女の日常を描いた部分に共感できる事がいくつもあったからだなと思います。

  • コンビニで働くというお仕事に、誇りを持ち全力で取り組む姿
  • 職場で聞こえるわずかな物音に敏感に反応し当たり前の毎日をお客様に提供する姿
  • 朝目覚めると、自動的にお仕事スイッチがONになってしまう姿

こんなザ・お仕事人間みたいな人、まるで昔の自分よう。痛々しくて応援したくなります(〃´-`〃)

協調性が正義とは限らない

わたしは、自分が感じるわずかな心の変化や直感を大切にしたいと思ってずっと過ごしてきました。
周りの目を気にして、本当の自分の気持ちをなかったことにはしたくない

もちろん、自分勝手なふるまいで誰かを傷つけ悲しませたりするような事もしたくない

「普通は」「ほとんどの人は」、この類の言葉から始まる会話がどうにもあまり得意ではないので、 
主人公の恵子にも、無理して周りに合わせる必要なんてないのにと心の中で思ってしまいます。

周りと足並みを揃えることも大事だけれど、
そうでないからと言って、誰かが 誰かの人間性を評価するのは違うなとあらためて感じました。

世界の正常な部品になりたいか?

「変わった人」「浮いてる人」は、誰が誰と比べてみた結果なんだろう。

そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。

著者名:村田沙耶香  書名:コンビニ人間  出版社: 出版年:文春文庫  ページ数: 25ページ


こんな言葉で自分の事を例えて喜んでいるなんて、無機質で何だか少し寂しく悲しいと感じてしまうけれど、 
自分が「みんな(=普通)」と違う事を淡々と受け入れ、
家族のために正常な部品になろうと真剣に取り組む恵子には、そう思える事が生きやすく心安らぐのかもしれません。

誰でも、人生のステージごとに時間を共にしている仲間は違い、
話し方や仕草も、大概そのとき時間を共にしている人達に引っ張られ似てくるものだと思う。 
今いる場所(環境)では当たり前の常識も、ひとたび離れて外から見れば普通じゃない事も山ほどある。 

「普通は」「ほとんどの人は」この類の言葉から始まる会話の物差しは、自分が出会う人によって少なからず影響され左右される。
誰が誰をどう思って評価していようと実際に自分が向き合ってみなければ、
「わたしにとっての普通」と同じかどうかなんてあてにならないものなんだと思います。

おわりに

この作品は、読んだ人それぞれで感想のふり幅が大きく異なるのではないかと感じます。

読んだ人の過去の経験・現在おかれている状況・育ってきた環境やその時々の仲間によって「当たり前の普通」の価値観は違う。
協調性を重要視する人もいれば、
わたしのように「協調性がある」と言われる事が、素直に喜べない人もいるのだと思います。

このブログを読んでくださった読者の方が、
「コンビニ人間」を読んでどんな事を感じたのか、率直な感想を聞いてみたいなという思いに駆り立てられます。
それくらい、多様な捉え方のできる面白い一冊でした。

本書を読んであらためて自分の在り方を考えたとき、
わたしは、心のままに ありのままに ゆるゆる暮らしていけたら幸せだなと思うのです。



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